今も昔も、小学生のお子さんがいるご家庭内での親子ゲンカの原因ランキングで上位にあがるものとして「宿題」があります。
小学校に入学したばかりの頃は、保護者の方もお子さんも「今日から小学生!勉強、頑張ろう!」という気持ちでいっぱいです。
学校から出される宿題の量も最初は少なめなので、すぐに終わってしまい物足りないぐらい。
でも、少しずつ学校生活に慣れてきて、宿題の量が増えたり、勉強に苦手意識を持ち始めると、だんだん宿題を後回しにするようになり…
保護者の方が「宿題終わったの?」とお子さんに聞くと、お子さんからは「めんどくさいからやりたくない」「ゲームで遊びたい」「今やろうと思ったのに、先に言われたからもうやりたくない!」というやりとりが毎日続くと、親子間でイライラ、ピリピリ。
保護者の方の心の中は「なんで怒られることがわかっているのにやらないの?どうせやるんだから先にやればいいのに!」
お子さんの心の中は「どうせやるんだから、やる気を下げるような言い方しないでよ。家に帰ると宿題、宿題ってうるさいよ!」
こんな調子で親子間の気持ちがすれ違ってしまうことはよくあります。
親子間の宿題問題はこれから6年間続きます。だからこそ、小学校入学後の早い段階で宿題問題を解決してしまうと親子間のストレスがグッと減ります。
そこで今回はまず、「宿題を嫌がる子どもの心理」と「学校がわざわざ宿題を出す理由」を一緒に考えてみましょう。
そして、民間学童ガクモン流の「新1年生が宿題を習慣化する5つのコツ」と「お子さんが宿題に前のめりに取り組む言葉掛けのバリエーション」をご家庭版にアレンジしてご紹介します。
宿題を朝の洗顔や食後の歯磨きと同じように無意識にでも取り組めるようになれば、大袈裟でなくその後の人生が大きく開けると思います。
親御さんは「子どもに宿題をやらせる」というマインドではなく、「子どもが宿題をやりたがる気持ちを引き出す」というコーチングのマインドを持ちましょう。
ぜひお子さんと一緒に宿題マスターを目指してください!
1.宿題嫌いの子どもの心理とは?
お子さんが宿題を「やりたくない!」と感じる理由にはいくつかのパターンがあります。宿題になかなか取り組めないお子さんの心理を理解することで応対の方法も変わってきます。まずは、宿題になかなか手が伸びないお子さんの気持ち、理解していきましょう。
パターン1:宿題は他人から与えられたタスクだから
宿題は学校で「明日までにこれをやってきてください」と担任の先生から与えられるタスクで、「何をやるか」「いつまでにやるか」「どれだけやるか」ということにお子さんの裁量はまったくありません。
さらに、1年生では、ひらがな練習やたし算・ひき算、音読など反復練習型の宿題が多く、よほど反復作業が好きなお子様でない限り、周囲の大人からの動機づけがないと、どうしても単調な作業を「やらされる」と感じてしまいます。
大人の世界で考えると…
例えば勤めている会社で、突然、これまでのキャリアと全く関係のない部署に異動させられて、まったく前提知識のない分野の専門書を上司から手渡され、「自宅で毎日音読と書き写しをして報告してください」と言われるようなものです。
マネジメント上手な上司であれば「なぜ専門書の音読と書き写しを業務時間外に自宅でやる必要があるのか」「それが今後のキャリアにどのような効果があるのか」「専門書の音読と書き取り訓練のその先の見通し」などを丁寧に説明し、さらには動機づけまでしてくれるかもしれません。
でも上司からの説明もなく、「業務時間外」で自分の自由な時間だと認識している退社後に意味もわからず、ひたすらに専門書の音読と書き取りを毎日繰り返さなければならなくなったら、理不尽に感じませんか??
子どもにも大人にも共通して言えることですが、何か物事に継続して取り組むときには、自分の心の中から「やりたい!」という気持ちが湧き出てくる「内発的動機」が重要だと言われています。
[ガクモン用語集]
内発的動機とは…
内発的動機とは、物事に対する強い興味や探求心など、人の内面的な要因によって生まれる動機を意味する言葉
外発的動機とは…
外発的動機とは、報酬や評価、罰則や懲罰といった、外部からの働きかけによる動機を意味する言葉
お子さんがアイドルに憧れて「ダンスを習いたい!」とか、サッカー中継を観て「サッカークラブに入りたい!」と親御さんにお願いするときの動機がまさに「内発的動機」です。
面白いから「〇〇したい」、もっと知りたいから「〇〇に行きたい」、楽しいから「〇〇と仲良くなりたい」といった思考パターンが内発的動機の典型例です。
一方で、「怒られるから〇〇やらなきゃいけない」「お小遣いをもらえるから〇〇を頑張る」「おもちゃを捨てられるから片付ける」といった思考パターンが外発的動機の典型例です。
外発的動機により行動するということが悪いというわけではありません。大人の社会ではむしろ外発的動機により行動しなければならないことも多くあり、むしろ社会のリアルだとも言えます。
ただし、この外発的動機による行動がまさに「やらされている」感の大きな原因です。
主体的に行動できる人の特長として、外発的動機により行動しないといけないモノ・コトでも、自分で「内発的動機」を見つけてきて、楽しみながら行動する工夫をします。
この「外発的動機▶︎内発的動機への転換」が上手にできるようになると、一見単調に見える作業も自分で意義を見出してストレスなく継続できるようになり、スポーツにせよ、勉強にせよ、自分で設定した目標に向かって着実に努力を重ねていけるようになります。
しかしながら、小学校1年生はまだ自分の動機(モチベーション)をコントロールすることが難しく、他人から与えられたタスクは無意識に「やらされている感」を感じてしまう傾向があります。さらにこのタスクをやらないと「怒られる」という外発的動機がさらに加わると、「やらされている感」がグッと増してしまいます。
パターン2:学校での生活で疲れ切ってしまう
1年生が学校で過ごす時間は、1日あたり約7時間です。さらに小学校は時間割によって時間の使い方が明確に決められていますし、授業中は先生の指示に従うことを求められるため、先述の「外発的動機」による行動が続き、まさに「やらされている感」の連続です。
一方で、小学校に上がると、お友だちとのコミュニケーションは、保育園や幼稚園の頃のように先生や親御さんの仲立ちがグッと減り、大人がいないところでのお友だち同士の関わり合いが増えます。自由度が増す分、子どもながらに自分の意思と責任が問われる機会も増えるので、心理的な負荷はグッと増してとても疲れます。
学校で先生の話を一生懸命に聞きながら勉強して、お友だちと心理的な距離感を測りながら仲良くしようと一所懸命に遊んで、ようやく放課後になったらホッと一息つきたくなる気持ちもとてもよくわかります。
大人の世界で考えると…
例えば、長年勤めていたアットホームな会社を退職して、誰も知り合いがいなくて同僚のバックグラウンドもさまざまな会社に転職した1年目。
未経験の業務を担当することになって、慣れない専門用語を必死に覚えながら、同僚とのコミュニケーションも取りながら、上司への報連相をようやく終えて迎えた終業時間。
明日の始業時間までに終わらせないといけないタスクが残っているものの、束の間の休憩時間。
「早く帰りたい」と思ってしまうのが人情ですね。
大人になるとオンオフの切替は自然と上手にできるようになりますが、小学1年生のお子さんだと一旦集中力が途切れてしまうと、気持ちを切り替える心理的な負担はとても大きいです。
そのため、学校から家に帰ってきてから「ちょっと休憩」とリラックスしているうちに、ダラダラタイムに突入してしまいあっという間に時間が過ぎてしまい、親御さんから「宿題終わっての?」と叱られて喧嘩になってしまうという悪循環が生まれます。
一方で、このようなタイプのお子さんは、学校ではむしろ”きちんとやらなくちゃ!”と気を張って生活しているケースが多いです。このような場合には、「なぜ宿題が終わっていないのか」と詰問するよりも、しっかりとリフレッシュしてから、気持ちの切替方を一緒に練習するといった心持ちで寄り添ってあげることが重要です。
不真面目だから宿題をやっていないと決めつけずに、オンオフの切替が上手にできていないから気持ちの切り替え方を根気強く教えてあげることがポイントです。
パターン3:宿題以外にやりたいことがある
お子さんが学校から帰ってくると、真っ先に「おやつをちょうだい!」といって、食べ終わると、すぐゲームを始めたり、タブレットでYou Tubeを観始める…
親御さんとしては「宿題を終わらせてから遊びなさい!」と言いたくなってしまいますよね。
小学校での生活では、先述のとおり、何をすべきか時間割でしっかり決まっていて、お子さんは「学校のルール」「先生の言うこと」を守るという外発的動機により与えられた課題を連続的にこなしていくことが求められます。
だからこそ、お子さんにとって放課後は「内発的動機」により自分の心の赴くままに行動できる待ちに待った“自由時間”です。
「怒られる」という外発的動機によって行動を求められる「宿題」よりも、「やりたい!」と心の底から湧き上がる内発的動機によって行動する「おやつ」や「ゲーム」が勝ってしまうのは、むしろ人間の習性として自然だとも言えます。
貴重な自由時間を最大限に楽しむために、学校からの帰り道を歩きながら「家に帰ったらおやつ食べて、このゲームをして、そのあとはこの漫画を読んで…」と計画を立てているお子さんもいるので、なかなか親御さんが思うように行動してくれず、もどかしさを覚える親御さんもいらっしゃるでしょう。
パターン4:習い事や友だちと遊ぶ約束で時間がない
学校から帰宅するとすぐに習い事に行ったり、友だちと遊ぶ約束をしているお子さんもいます。小学校1年生の8割以上が習い事をしているというデータもあり、多くの小学生が放課後に習い事の予定があります。
放課後に複数の予定があって宿題をやる「時間がない」と感じるお子さんの場合には、「宿題」が終わらない理由として、タイムマネジメントのスキル不足も挙げられます。
2.なぜ宿題をしなくちゃいけないの?学校が宿題を出す理由
家庭学習の習慣づくり
学校が宿題を出す最大の目的は、家庭で机に向かって学習することを習慣化することです。小学校に入学してから始まる本格的な学びは、中学生▶︎高校生▶︎大学生と進学する度に学習量も増えながら、続いていきます。
さらに現代社会は変化のスピードが早く、「リカレント教育」と呼ばれるように、学校教育を終えて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受けて「仕事」と「教育」を繰り返していくことが必要な社会でもあります。
学習習慣は、社会の変化に適応しながら生き抜いいくために、自分自身の知識や技術をアップデートしていくための土台であり、自分が思い描く人生を切り開いていくための道具でもあるといえます。
だからこそ、学校では家庭での学習時間が確保されて、子どもが学習習慣を身につけられるように「宿題」が出されます。
できれば宿題を出すだけでなく、子どもが宿題に進んで取り組む動機付けまでセットでやってくれればいいのですが…
基礎学力を定着させるための反復訓練
小学1年生の宿題では「ひらがな」「計算」「音読」が出されることが一般的です。
例えば、学校の授業内でひらがなの「う」の書き方を学んだ日には、「う」の練習をしたり「う」のつく言葉をプリントに書き出す宿題が出されます。
学校で学習した内容を、宿題でも繰り返し学習することで、学習内容の定着を図ります。
高学年になるにつれて、宿題の意図は少しずつ変化して、授業で扱った問題の類似問題や発展問題に取り組んだり、アウトプットのために一定の考える時間が必要となる作文など、より考える内容が増えていきます。
その頃には、家庭内で学習する習慣と環境が仕組みとしてできていることが前提となり、家庭学習の取り組みの程度が学力に直接影響するようになっていきます。
3.宿題を習慣化するための5つのポイント
次に、小学1年生のうちに宿題を習慣化するためにはどのような工夫が必要になるでしょうか。ご家庭で宿題に取り組む環境づくりのポイントを「5W1H(いつ・どこで・誰と・何を・どのように)」の5つの視点で確認していきましょう。
お子さん、ご家庭の実態に合わせて、ベストな方法を探ってみてください!
When(いつ)| 宿題が始まってからの1か月間で習慣づける
宿題というと子だちはみんな嫌がるイメージがあるかもしれませんが、実は入学したばかりの新1年生は宿題を楽しみにしていることが多いです。その理由は「宿題=小学生になった!」「小学生=かっこいい!」というイメージを持っている子が多いため、「宿題=かっこいい!」と考えるからです。
この「宿題=かっこいい!」「宿題が楽しみ!」という感情は、まさに先述した「内発的動機」そのものです。だからこそ「宿題をしっかりやりたい!」とお子さんの感情を逃さずに「習慣化」を動機づけることが超重要です。
親御さんや周囲の大人からのお子さんへの動機づけがないと、宿題が出されるようになってから数週間はお子さん自身で宿題を終わらせるモチベーションを維持できるのですが、1か月程度経って学校生活にも慣れて宿題の量が増えてくると、宿題の内容に飽きてきたり、学校の活動に疲れてしまったりして、宿題の優先順位が急激に落ちていきます。
そこで、宿題を楽しみにしている最初の1か月で宿題を習慣化できるかが重要になります。
お子さんの性格やご家庭の生活リズムにあったルーティン作りが大切です。その際は、親御さんが一方的に決めるのではなく、お子さんと話し合って決めるとお子さんのコミットメントを引き出せるので効果が高まります。
また、学校生活に合わせてルーティンも変化させていく必要があるので、「絶対に帰ってきたらすぐに宿題をやる」といった硬直的なルールではなく、ルーティンに無理が出てきたら、お子さんの申告によって変更できるように変更手順や方法もあらかじめ決めておくと良いです。
<例>
- 放課後に自宅に帰ってきたらまずやる
– おやつを食べたらやる
– 夕飯までの好きな時間にやる
– You Tubeを30分観たらやる
– 1時間好きなことをやったらやる
– 学童にいる時間でやる
Where(どこで)| 宿題に安心して取り組める場所を用意する
宿題の習慣化には、お子さんが宿題に安心して取り組める環境を用意することが大切です。
宿題の習慣化に最低限必要な環境として次の3点が重要です。
①整理整頓されていて、着席したらすぐに宿題を始められる空間
②気が散るものや誘惑が少なく、宿題に集中できる空間
③困ったときや集中力が切れてしまった時にサポートを求められる大人の存在
同じ空間にいる家族がテレビを見ていたり、近くにおもちゃで遊んでいる弟や妹がいると、集中力が途切れてしまいます。
小学1年生の集中力は「蜘蛛の糸」のごとく、細く、すぐに切れてしまうので慎重に繊細に大切に扱ってあげる必要があります。
宿題が習慣化していくと、集中力は少しずつ強く、太くなり、外部環境に左右されないほどの強靭な集中力が身につくと、どのような環境でも集中力のスイッチのオンオフを自分で調整できるようになります。
それまでは、お子さんの繊細な集中力の糸を大切に、大切に紡いであげましょう。
お子さんがリビングで宿題をする場合には、そのときだけでもテレビを消したり、弟さんや妹さんも読書やパズルをする時間にして、静かな空間にすると集中しやすくなります。
また、宿題に取り組み始めの頃は「ひらがなの”あ”はこれで合っている?」「このたし算の答えは合ってる?」といったようにわからないことや不安なことは、すぐ質問して解決できる環境があるとお子さんの安心につながります。
宿題に慣れるまでは、成果物だけでなく、宿題に取り組むプロセスにもできるだけ寄り添って見てあげると効果的です。
Who(誰と)| 親子で一緒にやってみる
一人で学習に取り組むことに孤独感や抵抗感を感じるお子さんもいます。同じ学年のお友だちと一緒に宿題の習慣化に取り組めると「宿題」自体がイベントになとともに、ピアプレッシャーが生まれて、宿題に主体的に取り組む環境が作りやすくなります。ただご家庭では友だちと一緒に宿題をやるということは難しいと思うので、親御さんが友だちの代わりに一緒に宿題に取り組む、ように見せかけてお子さんの宿題を促す方法をおすすめします。
「今日はママも〇〇ちゃんと一緒に宿題やろうかな」と言いながら、紙とえんぴつを用意して、「今日の宿題はどれ?ノートにどうやって書くの?」「〇〇先生、ちょっとお手本で書いて見せてくれますか?」と促すと効果的です。
What(何を)| 褒める
先述のとおり、お子さんの宿題に対する主体性を引き出すためには、「外発的動機」から「内発的動機」に切り替えていく必要があります。しかし、もともとも嫌々やっていた宿題を、「気持ちの持ちよう」を変えるだけで、ある日突然に楽しくなるという可能性は低いです。
そのため「外発的動機から内発的動機への変化」を以下のステップで行うことをおすすめします。
STEP1|外発的動機付けを2つに分ける
- ネガティブな外発的動機付け:叱る
- ポジティブな外発的動機付け:褒める
STEP2|“ネガティブな外発的動機付け” ▶︎ “ポジティブな外発的動機付け”
「宿題をやってないから叱られる・注意される」という “ネガティブな外発的動機付け” の状態から、「宿題を頑張ったから褒められる・喜ばれる」という “ポジティブな外発的動機付け” の状態に変えていきましょう。
この際に特に大切なことは保護者の方が「宿題をやるなんて当たり前のこと。褒められることではない」といったようなストイックな姿勢を持ちすぎないことが重要です。
大人だって当たり前のことをやったとしても、「ありがとう」「素敵だね」「助かった」「頑張ってるね」と声をかけてもらえると嬉しいですよね。
「宿題をやらないと怒られる」、「宿題は面倒くさい」というネガティブなイメージよりも、「宿題をやっておいてよかった!」というポジティブなイメージが持てるように言葉掛けすることが大切です。
さらに、お子さんに言葉掛けをするときのコツとして、「すごいね」「上手だね」といった褒め言葉を伝える時には具体的に「何が」すごいのか、上手なのかを具体的に伝えてあげましょう。
<例>
「この『お』の字、とても上手に書けてるよ。宿題で一生懸命に練習したんだね!」
「授業で引き算の問題、みんなの前で答えられたの?すごいね、宿題のドリルを頑張っていたもんね!」
STEP3|“ポジティブな外発的動機付け” ▶︎ 内発的動機づけ
親御さんから「褒められる」「喜ばれる」という “ポジティブな外発的動機付け” が増えるとお子さんは「もっと褒められたい」「もっと喜ばれたい」という “欲” が生まれてきます。
そして「もっと褒められたいから宿題を早くやろう」「もっと喜ばれたいから宿題を頑張ろう」と宿題に取り組む姿勢が主体的なものに変わっていきます。
そして宿題を主体的に取り組むようになると、自然と学校でも「苦手だったことができるようになった!」といった苦手を克服できた成功体験や、「計算がクラスメイトよりも早く解ける!」といった得意を見つけた成功体験を自分で積むようになります。
このような宿題への取り組みを通じた成功体験の積み重ねによって、少しずつ“ 宿題をやる理由 ”が、「褒められる・喜ばれる」から「もっと難しい問題を解けるようになりたいから宿題を頑張ろう」とか「もっと字を上手に書けるようになりたいから宿題を頑張ろう」といったように「内発的動機付け」に自然と転換されていくようになります。
How(どのように)| 再現可能性が生まれるように伝える
宿題を習慣化していくために、お子様にフィードバックする時には次のように再現可能性を高める言葉かけ(「●●したから褒められたんだ」、「●●すると喜ばれるんだ」といったようにお子さんがどのように行動すれば良いのかを予測するための「●●」部分)をおすすめします。
お子さんができたことや、親御さんが今後もお子さんに意識して欲しいことを具体的に言語化して伝えましょう。
お子さんは「こうすればいいんだ!」という再現可能な行動を認識できるので、また「明日も学童で宿題をしよう!」「集中して問題を解く方がいいんだな」と感じることが出来ます。
<例>
「おやつを食べる前に自分で宿題を終わらせたんだね、すごい!」→ 自主的に宿題を取り組むことを促す言葉掛け
「途中で休憩せずに最後まで集中して問題を解けたんだね、すごい!」
→ 集中力を切らさずにやり抜くことを促す言葉掛け
「学童で宿題をやってきたんだね。いつもよりゆっくり一緒にごはんを食べられるから嬉しいな。今日、学校であったことを聞かせてくれる?」
→ 学童で宿題を終わらせてくることを促す言葉掛け
4.宿題をどうしてもやりたくないときの処方箋~言葉掛けのバリエーション~
どうやっっても宿題を嫌がるお子さんがいたら、親御さんはどのような言葉掛けをしたらいいのか悩んでしまいますよね。ここでは、お子さんが宿題に主体的に取り組むようになる前の「葛藤期」によくある場面を想定して、言葉掛けのバリエーションをご紹介します。
「なんで宿題をやらなきゃいけないの?」と聞かれたら…
宿題をやるメリットをお子さんが理解できる言葉で伝えましょう。ポイントは肯定的な言葉で「明るい未来につながっていくこと」が想像できるように伝えることです。
宿題をやるメリットはたくさんあります。親御さんの実体験のエピソードがあれば、お子さんに伝えてあげましょう。
宿題のメリットを理解できるようになると、宿題を単純な反復作業として捉えるのではなく、「『お』を10回練習すると、もっと上手に書けるようになるんだ!」とか、「授業で習ったことを忘れちゃうともったいないから、計算問題を10問やろう!」というように宿題をやることに目的意識が生まれるようになります。
<例>
・子ども自身の力になる
「宿題でひらがなを練習すると、さらに上手にひらがなを書けるようになるよ!」
・復習のため
「授業で習ったことを思い出すためだよ。せっかく覚えたことを、すぐに忘れちゃったらもったいないよね!」
・次の授業の準備のため
「この問題を解けるようにしておくと、次の授業がもっとわかるようになって楽しいよ!」
帰宅後のリラックスモードから抜け出せないお子さんに…
「いい加減、宿題をやりなさい!」といったように突然にこれまでの行動を打ち切ったり、否定するような言葉掛けは逆効果です。
「時計の長い針が6になったら」、「あと30分したら」など、お子さん自身にスイッチを切り替えるタイミングを “ 宣言 ” させられると効果的です。
<例>
「何時まで休憩する?」
「何時から宿題始める?」
宿題をやる前にゲームやおもちゃに手を伸ばしてしまうお子さんには…
おもちゃやゲームに手を伸ばす前に、「何時から宿題を始めるのか」お子さん自身に宣言してもらいましょう!そして、宿題の前に遊ぶ時間の約束をお子さん自身が決めて、自分で決めた約束を「守れた時」と「守れなかった時」のルールまでお子さん自身に決めて宣言するように促すと効果的です。
ポイントは「親御さんとの約束」ではなく、「お子さん自身との約束」ということです。
約束を守れなかったときには「約束を破った!」と叱るのではなく、「自分自身との約束を守れなかった」お子さんに「次回はどうすれば自分との約束を守れるか」を助言してあげるようなスタンスが重要です。
<例>
「何時から宿題を始めるか自分と約束してから、遊ぼうね」
習い事などで予定がたくさんあるお子さんには…
あらかじめわかっている1週間分の予定を書き出しておいて、お子さんが見通しをもって生活できるようにお膳立てしてあげることが大切です。
特に予定が多い日は、あらかじめその日の放課後の流れをお子さんと一緒に確認しておくと良いです。
帰宅後は予定を消化していくことに慌ただしくなりますので、学校に行く前に確認をしておくことがポイントです。
<例>
「今日は学校の後にピアノのレッスンだよね。宿題はいつやる予定?」
5.お子さんの個性や家庭の事情にあった宿題の取り組み方を見つけよう!
もし、宿題の難易度やボリュームが、お子さんの理解度やご家庭の事情に合っていないと感じたら、無理を続けるのではなく、担任の先生に正直に相談してみましょう。
小学1年生が宿題に取り組む意義は、これまで見てきたように「家庭学習の習慣化」にあります。なので、無理を重ねて宿題を原因として親子関係が悪化したり、宿題が難しすぎて(多すぎて)「一生懸命やってるのに終わらない」という失敗体験を毎日積み重ねてしまって苦手意識を持ってしまっては本末転倒です。
担任の先生に相談すると、宿題の難易度や量を調整してもらえることがあります。
ぜひ上手に宿題を習慣化して、大人になっても役立つ学習習慣を身につけられるといいですね!