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うまく話す、その手前にある経験。

発表が得意でなくても参加できる、伝える経験のつくり方

見せるだけでも、一言でも。
その子の「伝えたい」に、入り口を。

自分の描いた葉の絵を見せる子どもと、それを聞く友だちや大人のイメージ

家では楽しそうに話しているのに、みんなの前に立つと言葉が出てこない。何か聞かれると、こちらを見て「代わりに言って」と頼んでくる。そんな様子を見ると、「学校で困らないかな」と気になることがあります。

けれど、長く話せるかどうかだけで、子どもの中にある考えの量は分かりません。伝えたいものはあっても、何から話すか迷っていたり、相手の反応を気にしていたりするかもしれません。

「もっと大きな声で」の前に、今はどんな方法なら伝えられそうかを一緒に探してみませんか。この記事では、発表を上手に仕上げる練習ではなく、伝え合う場面への入り口を考えます。

最初に、ものさしを変えてみる

「みんなの前で話せた」だけを、
ゴールにしなくてもいい。

好きな本のページを開いて見せる。工作の気に入っているところを指さす。友だちの案を聞いて「ぼくもそっち」と選ぶ。こうした短いやり取りにも、自分の意思を相手へ届ける場面があります。

聞くことも、関わり方の一つです。ただ、「静かに聞いていたから分かっているはず」と決めつける必要はありません。「どちらが気になった?」と選べるようにしたり、あとで一対一で確かめたりして、その子なりの反応を受け取ります。

その子に合う入り口を探す

言葉の長さより、
「何を届けたいか」から。

以下は家庭や活動場面で考えられる例です。特定の子どもの実話や、ガクモン全校舎での実施を約束する内容ではありません。

見せる

作品や絵を、相手に向ける

説明を全部用意しなくても、まずは見てもらいたいものを選ぶ。「ここが好き」と指さすだけでも、相手と同じところに目を向けるきっかけになります。

「見てほしいところ、どこかな?」

選ぶ

二つの案から、気持ちに近い方を

「どう思う?」が広すぎるときは、実物や絵を並べてみます。どちらでもない、まだ決めていない、という答えも残しておきます。

「こっちとこっち、ほかの案もある?」

一言を添える

伝えたいところを、一つだけ

最初から理由まで整えなくても、「青にした」「ここが難しかった」など一つの言葉で区切れます。続きが出てくるまで、すぐ次の質問を重ねずに待ちます。

「一番見てほしいところだけでもいいよ」

手元に置く

絵やメモを、話す手がかりに

覚えてから話すことを条件にせず、見ながら伝える方法も選べます。書くことが負担なら、写真や実物を使ったり、大人が聞いて書き留めたりしてもよいでしょう。

「忘れたくないこと、何を残しておく?」

工作の気に入った部分を指さして友だちに見せる子どものイメージ

たとえば、工作を見せるとき

大人が説明を完成させず、
子どもの選んだところを受け取る。

子どもが車の工作を持ってきたら、「タイヤを工夫したんだね」と先回りしたくなるかもしれません。でも、本人が見せたかったのは、後ろにつけた小さな荷物入れだった、ということもあります。

「どこを見てほしい?」と尋ね、指さしたところを一緒に見ます。「ここが開くんだね」と見えたことを返して、違っていたら直してもらう。大人の上手な説明へ置き換えるより、本人の意図を確かめるやり取りを大切にします。

言葉が少なくても、「自分が選んだところを、相手が見てくれた」。まずはそんな小さなやり取りをつくれます。

話す前にできること

準備するのは、立派な原稿より
「誰に・何を・どうやって」。

いきなり「では、発表して」と始めるのではなく、伝える場面を具体的にしておきます。次の三つは、すべて答えさせる質問表ではありません。迷っているところを一つ選んで、相談するための手がかりです。

伝えたいことを絵のメモにして大人と確認する子どものイメージ
誰に
まずは大人一人に、友だち一人に、少人数に。人数だけでなく、相手との関係や場所も一緒に考えます。
何を
全部の出来事ではなく、見つけたもの、選んだ理由、聞いてほしい疑問など、今日は一つだけでも。
どうやって
話す、見せる、一緒に伝える。本人が選んだ言葉を大人に読んでもらうなら、その伝え方でよいか先に確かめます。

練習も「間違えずに言えるまで」ではなく、本人が確かめたいところに合わせます。途中で止まったときにメモを見てよいか、困ったら誰に合図するか。話し方の完成度よりも、困ったときの戻り方を共有しておくこともできます。

話している子どもを急かさず、友だちと大人が聞いているイメージ

伝えやすさは、聞き手もつくれる

問いを増やすより、
受け取り方を整える。

話す側にばかり工夫を求めず、聞く側も少し変えてみます。言い終わる前に答えを補わない。声の大きさや言い間違いだけを先に指摘しない。途中で考える時間があっても、すぐ「分からないならいいよ」と打ち切らない。

伝わったことを返すときも、「すごいね」だけで終える代わりに、「遠くまで走らせたくて、大きいタイヤを選んだんだね」と内容に触れてみます。聞き取り違いがあれば、子どもが「そうじゃなくて」と直せる余地も残します。

友だち同士なら、同じ案にそろえる必要はありません。「私は別の色にしたい」と違いが出ても、どちらが上手かを決める場ではなく、お互いの考えを知る場にできます。

大人のひと言を、置き換えるなら

急かさず、選べる言葉を添える。

「ちゃんと説明して」ではなく
「ここを見せる? 一つだけ話す? どちらでもいいよ」
「ほら、みんな待っているよ」ではなく
「少し考える? 先に私に伝えておく?」
「次は一人で言えるね」ではなく
「今日はこのやり方だったね。次はどうしたい?」

言い換えをすれば必ず話せる、ということではありません。その場で話さない選択も含めて、本人の様子を見ながら使う言葉の例です。

終わったあとも、
声の大きさだけで振り返らない。

「ちゃんと言えた?」より、「見せたかったところは伝わった?」「次もメモを使いたい?」と、本人が確かめられることに目を向けます。大人が見ていた行動を、「相手に見えるように絵を向けていたね」と具体的に伝える方法もあります。

今日は見せるだけ、別の日には一言を添える。前に話せたから今日も同じようにできる、と決めずに、そのつど参加しやすい方法を探します。体験を振り返る会話を考えたい方は、体験のあと、子どもと何を話す?もあわせてご覧ください。

書かれた言葉を声で届ける場面については、音読は速く読む練習だけ?聞き手に伝える工夫もご覧ください。読み終わる速さではなく、どんな場面が相手に届いたかを一緒に確かめるヒントを紹介します。

伝えたあとに違う意見が返ってきたら、意見が違うときに育つ経験。話し合いを支える関わりもご覧ください。案の後ろにある理由を聞き、次に試す方法を一緒に考えます。

放課後の環境を選ぶときに

「発表の機会があるか」に加えて、
参加の支え方を聞いてみる。

ガクモンプログラムでは、「言葉を増やす・話す・調べる・考える・話し合う」という五つの取り組みをつなげ、自分の考えをつくり、人へ伝える経験を大切にしています。発表という一場面だけでなく、その前に考えることや、相手の話を聞いて考え直すことも含めた取り組みです。

見学や利用相談では、「家では話すけれど、大勢の前では止まってしまう」「絵を見せながらなら伝えやすい」など、普段の様子をお聞かせください。具体的な活動や参加の支え方は、各校舎へご確認ください。

相談のときに確かめたいこと

  • 活動で、子どもの考えをどのように聞いているか。
  • 言葉が出にくい場面では、どのように関わるか。
  • 普段の様子や気になったことを、家庭とどう共有するか。

構成・編集:ガクモン編集部。本文の会話・場面とイラストは、関わり方を考えるための例です。