01 / まず、言葉の定義から
ガクモンが考える「学習習慣」とは。
「学習習慣」と聞くと、毎日決まった時間に宿題をする姿が思い浮かぶかもしれません。それも大切な一つです。ただ、ガクモンが育てたいのは、机に向かっている時間だけではありません。分からないことを確かめたり、自分の考えを伝えたりすることも、学びの中にあります。
学習とは、知ることと、使ってみること。
ガクモンでは「学習」を、読む・書く・聴く・話す・考えるという一つひとつの技能を磨き、目的に合わせて組み合わせながら、理解や行動を更新していくことと捉えています。
文章の意味を読み取り、気づいたことをメモし、友だちの考えを聴いて、自分の案を説明する。知識を得るだけでなく、その知識を使い、必要なら考え直すところまでが学びです。宿題にも、遊びにも、人との関わりにも、その機会があります。
習慣とは、繰り返し取り組める行動のあり方。
習慣は、同じ状態や行動を続けることと関わる言葉です。学習については、その日の気分だけに左右されず、繰り返し取り組めるようになった行動のあり方として考えています。
毎回同じ気持ち、同じ量、同じ方法でできることを求めているわけではありません。始め方を決める、困ったら相談する、疲れた日は量を調整する。休んだ後に戻る方法を持つことも、続けるためには大切です。
その道すじに、気持ちと考え方を育てる関わりを。
学びに向かうときには、行動を支える気持ちの扱い方と、物事の捉え方が必要になります。ここでは、気が乗らない、不安、悔しいといった気持ちを受け止めて取り組み方を整えることを「メンタリティ」、学びや自分の力、失敗をどう捉えるかを「マインドセット」として説明します。
「分からないことは確かめてよい」「うまくいかなければ方法を変えられる」。そう思える経験は、次の行動の支えになります。ただし、考え方を先に完成させてから始めるのではありません。大人の支えのもとで選び、試し、変化を確かめる。その繰り返しの中で、行動と考え方を一緒に育てていきます。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 取りかかったかどうかだけでなく、方法を選んだり、分からないところを相談したりできたかを見ます。
- 量機会をどう重ねるか
- 取り組んだ時間だけでなく、選ぶ・試す・確かめる機会を重ねていくことを大切にします。
学習習慣は「一人で我慢して続ける力」ではありません。環境や周囲の助けも使いながら、自分で学びを進められる場面を少しずつ増やすこと。これがガクモンの考える出発点です。
02 / 学ぶ力を、細かく見る
読む・書く・聴く・話す・考えるを、つなげて使う。
本を読めるのに、問題で何を聞かれているか分からない。話を静かに聴いていたのに、次にすることがつかめていない。「読む」「聴く」ができたかどうかは、見た目だけでは分からないことがあります。だからこそ、学ぶ力をもう少し細かく見てみたいのです。
五つの技能には、それぞれに練習したいことがある。
読むときには、言葉や条件を捉え、必要な情報を取り出す。書くときには、材料をメモし、順序や理由を整理する。聴くときには、相手が伝えたいことを確かめ、分からない点を聞き返す。
話すときには、考えと理由をつなぎ、伝わらなければ言い換える。考えるときには、比べ、予想し、結果を見て判断を見直す。「たくさん読んだ」「長く話した」だけでなく、その中で何ができたかに目を向けます。
組み合わせると、使える場面が広がる。
たとえば、みんなで遊びのルールを考える場面を想像してみてください。まずルールを読み、気になる点を書き出します。友だちの意見を聴き、変更案を考えて話し、実際に遊んでから書き直す。この一つの活動の中で、五つの技能が行き来します。
こうした技能の組み合わせを、ガクモンでは学びの「コーディネーション」として大切にしています。五つを毎回全部使うことが目的ではなく、その場で必要な技能を選び、つなげて使えることを目指します。
得意な方法を、次の方法への手がかりに。
言葉で説明しにくいときには、絵を描いたり、指さしたりして伝えることもできます。話せたことを短いメモにしてみる。書いたものを見ながら説明してみる。できていることを手がかりに、別の技能にも取り組んでいきます。
同じ学年でも、読み書きや伝え方の得意・不得意は異なります。速さや発言の多さだけで比べず、その子が内容を理解し、自分の方法で表せているかを確かめることが大切です。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 内容を確かめる、理由を添える、伝え直すなど、一つひとつの技能の使い方を見ます。
- 量機会をどう重ねるか
- ページ数や文字数だけでなく、読み直す、質問する、書き直すといった試みも学ぶ機会として捉えます。
ガクモンプログラムの「言葉を増やす・話す・調べる・考える・話し合う」は、こうした技能を使う場です。五つの技能と五つの活動は一対一の対応ではなく、活動の中で重なり合うものとして考えています。
03 / 自分なりの理由を持つ
「やらされる」から、自分なりの理由を持つことへ。
「言われればやるけれど、自分からはなかなか」。そう感じる日もあるのではないでしょうか。すべての課題を最初から好きになれるわけではありませんし、小学生がいつも遠い将来のために頑張れるとも限りません。まずは、本人に分かる理由を一緒に探してみます。
「面白い」だけが、取り組む理由ではない。
もっと知りたい、上手になりたい、友だちに伝えたい。学ぶ理由はさまざまです。「明日の授業で困らないように、ここは確かめておきたい」という理由でもかまいません。誰かに勧められたことでも、本人が意味を感じられることはあります。
大切なのは、外から与えられた課題かどうかだけではなく、本人がどう受け止めているかです。「役に立つから」と大人の説明を重ねる前に、気になっていることや、困っていることを聴いてみます。
選べるところを、具体的に渡す。
すべてを自由に決めるのは、かえって難しい場合もあります。「宿題はする。その中で、どれから始めるかは選べる」というように、必要なことと選べることを分けると、判断しやすくなります。
先に音読をするか、計算をするか。メモにするか、まず話して整理するか。選択肢は大きなものでなくても十分です。自分で選び、やってみて、合わなければ変える経験を重ねていきます。
答えを急がず、行動から興味を見つける。
「何のために勉強するの?」と聞かれても、うまく答えられない子もいます。理由を言えないことを、意欲がないと決めつける必要はありません。何度も見ている本、よく質問すること、時間を忘れて取り組む遊びにも、本人の関心が表れます。
大人がその様子を言葉にして返すことで、子どもが自分の興味に気づくこともあります。説明できることだけを求めず、指さしや選択、日々の行動も手がかりにします。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 大人に合わせた立派な理由より、本人の興味や困りごとに結びついた選択を大切にします。
- 量機会をどう重ねるか
- 選択肢を渡す機会と、選んだ後に確かめる機会を重ねます。答えを言わせる回数は目標にしません。
自分なりの理由は、最初からはっきりしていなくてもかまいません。ガクモンは、日々の学習や活動の中で、本人が選び、納得して取り組める場面を増やしていきたいと考えています。
04 / 始められる工夫を持つ
やる気を待つだけでなく、始められる工夫を。
机には向かったけれど、筆箱を探しているうちに気がそれてしまう。宿題の多さを見ただけで、手が止まってしまう。始められない理由は、やる気の不足とは限りません。何をどうすればよいかが見えないだけの場合もあります。
始める前の負担を、少し減らす。
使うものを出す、今日取り組むことを確かめる、最初の一つを決める。こうした準備があると、始めるまでに迷うことを減らせます。毎回違う指示を増やすより、分かりやすい流れを一緒につくることから考えます。
周囲の音や目に入るもの、座る場所が気になることもあります。集中できない様子を見たら、「ちゃんとしなさい」の前に、環境や体調、課題の難しさを確かめます。
大きな課題を、今できる一歩に分ける。
「全部終わらせる」と考えると遠く感じても、「まず一問読んで、何を聞かれているか確かめる」なら動き出せるかもしれません。量を小さくするだけでなく、最初の行動を具体的にすることが大切です。
途中で確かめる場所も決めておくと、困ったまま進めずに済みます。最初に決めた計画が合わなかったときは、順番や区切りを変えてよい。計画を守ることだけを成功にしないようにします。
休むことと、戻ることを一緒に考える。
学校で力を使った後には、休息が必要な日もあります。休憩を挟むなら、何をして休むか、戻ったら何から始めるかも相談しておきます。休んだこと自体を失敗と捉える必要はありません。
同じ方法が毎日合うとは限りません。試してみて「これなら始めやすかった」を見つけることが、自分に合う学び方を知る経験になります。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- ただ座り続けることではなく、取りかかり方を理解し、必要な準備や調整ができるかを見ます。
- 量機会をどう重ねるか
- 長さを一律に求めず、取り組める区切りで試します。始め直せた場面も、繰り返しの一つです。
ガクモンの宿題サポートでも、取りかかって終えるまでの流れを大切にしています。課題を進めることと、自分に合う始め方を覚えること。その両方を見ていきます。
05 / 手応えを確かめる
小さな変化に気づくことが、次の一歩になる。
「どうせ、ぼくはできない」。そう言われると、「そんなことないよ」と励ましたくなります。ただ、本人がうまくいかないと感じているときには、励ましだけでは届かないこともあります。何ができて、どこが難しかったのか、一緒に具体的に見てみます。
比べるなら、前の自分との違いを。
前は問題を読まずに答えを書いていたけれど、今日は条件に線を引いた。前は困って黙っていたけれど、今日は質問できた。点数や完成した量には表れない変化もあります。
友だちの速さばかりを基準にすると、本人の工夫が見えにくくなります。その子の前回と今回を比べ、変わったところを具体的な言葉で返すことを大切にします。
「頑張ったね」の先に、何をしたかを添える。
「よく見直したから、間違いに気づけたね」「図にしたら、順番が分かったね」。結果と、その前に本人がしたことを結びつけると、次にも使える手がかりになります。
いつも成功する必要はありませんし、何でもほめればよいわけでもありません。できなかった部分はそのまま確かめながら、役に立った工夫と、次に変えたいところを分けて考えます。
少し先の目標を、一緒に調整する。
簡単すぎても、難しすぎても、取り組む意味を感じにくいことがあります。「今はここまでできる」を確かめてから、次に試すことを具体的に決めます。
やってみて負担が大きければ、量や方法を変えてかまいません。目標を見直すのは後退ではなく、今の自分に合う取り組み方を探すことです。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 点数だけでなく、使った方法や相談の仕方など、次にも使える具体的な変化を確かめます。
- 量機会をどう重ねるか
- 成功の数を競わず、試みと振り返りを重ねます。難しさや必要な支えは、その都度調整します。
「自分にもできることがある」という手応えを、根拠のない励ましではなく、実際の経験から持てるように。宿題のやり直しや活動の振り返りでも、この視点を大切にします。
06 / つまずいたときの選択肢
うまくいかないときにも、学びを続ける方法がある。
間違えると手が止まる。初めてのことが心配で、参加する前から「できない」と言う。そんなときに必要なのは、いつも「大丈夫、やってみよう」の一言とは限りません。何が難しく、何が心配なのかを知ることから始めます。
できなかったことと、その子自身を分けて考える。
一つの問題が解けなかったことは、その子が何もできないという意味ではありません。どこまでは分かっていて、どこで止まったのか。読み違いなのか、やり方をまだ知らないのか。困りごとを小さく分けて見ます。
「努力が足りない」で終わらせず、変えられる条件を探します。説明を聞く、図にする、問題の量を減らす、別の順番で取り組む。本人だけに解決を任せず、大人も方法を用意します。
不安な気持ちは、無理に消さなくてもよい。
「失敗したらどうしよう」という心配がある子に、前向きな言葉を言わせる必要はありません。人前で話すのが心配なら、先に大人一人に話してみる。言いたいことをメモにして持つ。準備の仕方を選べます。
不安の扱い方には個人差があります。楽しい想像が助けになる子もいれば、気になることを先に確かめると動きやすくなる子もいます。本人の反応を見ながら考えます。
続けるだけでなく、変える・休む・助けを求める。
同じやり方で頑張り続けることだけが、粘り強さではありません。負担が大きいときには休み、目標や方法を見直すことも必要です。分からないまま一人で抱え込まず、相談できることも学ぶ力です。
疲れや環境、課題との相性、学習上の困難を、気持ちの弱さとして扱わないこと。ガクモンは、安心して「困った」と言える関わりを、挑戦を支える土台にしたいと考えています。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 失敗を自分全体の評価にせず、難しかった箇所や必要な助けを具体的にできるかを大切にします。
- 量機会をどう重ねるか
- 同じ方法の反復だけでなく、違う方法を試す機会をつくります。休息が必要な日は無理に回数を増やしません。
学び続けるとは、困らなくなることではありません。困ったときに使える方法や、相談できる人がいること。その安心があってこそ、次の一歩を考えられます。
07 / 大人の関わりを考える
一緒に考える。少しずつ、本人に任せる。
手伝いすぎると自分でしなくなりそう。でも、任せると止まったまま。どこまで関わればよいか、迷う場面は少なくありません。ガクモンが大切にしたいコーチングは、大人が何も教えず、質問だけで答えを引き出すことではありません。
まず、何が分かっているかを知る。
同じ「できない」でも、やり方が分からないのか、始める順番が決まらないのか、失敗が心配なのかで、必要な関わりは変わります。様子を見て、本人の言葉を聴き、必要なら選択肢や図を使って確かめます。
説明できない子に「なぜ?」を重ねると、問い詰められたように感じることもあります。急いで答えを求めず、一緒に問題を読んだり、できているところから見たりすることも大切です。
知らないことは教え、考えられるところを残す。
知識や手順をまだ知らないときには、説明や手本が必要です。最初の一つを一緒に行い、次は手がかりを見ながら試してもらう。大人が全部代わりに終えるのではなく、本人が考えたり動いたりする部分を残します。
試した後には、何が変わったかを具体的に返します。「この図で分かったね」「ここは、もう一度説明がいるね」。できた・できないの判定だけでなく、次に何を使えばよいかが分かる関わりを目指します。
任せる範囲は、行き来してよい。
昨日は一人でできても、今日は難しいことがあります。新しい課題なら、また一緒に取り組むところへ戻ってかまいません。支援を減らすこと自体が目的ではなく、必要な助けを使いながら自分で進められることが目的です。
読むところは自分で、計画は一緒に。話す前にはメモを用意する。このように、課題や場面によって任せる範囲を調整していきます。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 大人が答えを代行していないか、必要な説明を省いていないか。その両方を確かめる視点を持ちます。
- 量機会をどう重ねるか
- 声かけの多さだけでなく、本人が考え、選び、試す時間や機会があるかを大切にします。
自分から学ぶ姿は、放っておけば育つというものではありません。一緒に取り組み、手がかりを渡し、任せられる部分を見つける。ガクモンは、その日々の関わりを大切にします。
08 / ガクモンの放課後につなぐ
その積み重ねを、いつもの放課後に。
学習習慣を育てるために、毎日特別な教材や大きな目標が必要なわけではありません。何をするか確かめる、分からないことを相談する、試した結果を振り返る。放課後のさまざまな場面に、ここまでご紹介したことを使う機会があります。
宿題を、取りかかり方からやり直しまで。
ガクモンでは、宿題に取り組み、丸つけや間違いのやり直しまで進める流れを大切にしています。課題を終えることに加え、準備や進め方、分からないときの相談も学ぶ機会として捉えます。
小学4年生以上のガクモンブーストでは、計画や進み具合の確認、質問の整理、振り返りを通して、自分で学習を進めることを支えます。必要な支援は学年だけで一律に決めず、その子の状況に合わせて考えます。
言葉にし、人の考えに触れ、試してみる。
ガクモンプログラムでは、言葉を増やす・話す・調べる・考える・話し合う活動を行き来します。自分の意見を伝えるだけでなく、相手の理由を聴き、自分の考えを見直すことも大切にしています。
習い事やイベントには、まだ知らない分野に出会い、学んだことを別の場面で使う機会があります。友だちと遊ぶ時間にも、相談したり、役割を決めたりする経験があります。活動の内容や実施状況は、校舎や時期によって異なります。
どれだけ取り組んだかと、どう取り組んだか。
続けていくには、実際に使う機会が必要です。ただし、時間や回数が多ければ、それだけで十分とは考えていません。理由を添えて話せたか、違う方法を試せたか、必要な助けを求められたか。経験の中身にも目を向けます。
一人ひとりの気持ちを点数にしたり、同じ回数や速さを求めたりするのではなく、その子の変化と必要な支えを見ていく。学習習慣を育てる場として、この両方の視点を大切にしたいと考えています。
変化を見ていく、二つの視点
- 質どう取り組んだか
- 知識や技能を、目的に合わせて使えているか。自分の考えや取り組み方を見直せるかを大切にします。
- 量機会をどう重ねるか
- 宿題や活動、日常の関わりの中で繰り返し使う機会を持ちます。一律の時間・回数や成果を保証するものではありません。
学習習慣を身につけることと、さまざまな経験を重ねることは、別々ではありません。経験が学ぶ理由になり、学ぶ力が経験を深める。その行き来を、いつもの放課後につくっていきます。